御宅草紙 -キングインター妄想日誌-

2015年4月10日

大事な一枚~ショーソンのコンセール/ペヌティエ、パスキエほか

テレビCMで使われている曲が気になって、どうにかしてその曲名を知りたいという経験をされたことはあるだろうか。

わたしにとっては、ショーソンのコンセールとの出会いがそれだった。もうかなり以前のことで、たしか大学浪人の頃だからかれこれ30年近く昔のことになる。

CMそのものの記憶はかなりあいまいなのだが、西洋人の少女(だいぶあとになって、このときの少女が若き日のエレーヌ・グリモーであることを知った。ここではピアノは弾いていなかった)がイメージ・キャラクターとして出演するそのCMでは、ピアノの分散和音に乗せて、弦楽器が妖しく合いの手を入れる、この世のものとも思えぬ幻想的な調べが印象的に使われていて、頭から離れなかった。

たいした知識もないわたしでも、フランス音楽らしいことぐらいはなんとなくわかった。今にしてみればまるで根拠のない確信だったのだが、それでも片っ端から、ドビュッシー、ラヴェル、フォーレといった室内楽のアルバムを買い求めたけれども、どれも違った。しかも、お金のない学生時分のことで購入のペースも遅めということもあり、あの曲を最初に耳にしてから数か月が過ぎていった。

そうこうしているうちに、ショーソンという作曲家に行き着いた。まず、手にした一枚が、ピアノ三重奏とピアノ四重奏とを組み合わせたもので、harmonia mundi FRANCEのレジス・パスキエ、ジャン=クロード・ペヌティエらによる演奏(HMA-1901115)だった。洒落た感じの雰囲気で結構気に入ったのだが、あいにくわたしが探していたのはこれではなかった。
ただ、ここであきらめなかったのがよかった。ピアノ四重奏の演奏がよかったからだろう。つぎに手を伸ばしたのが、やはりレジス・パスキエ、ジャン=クロード・ペヌティエら、ほぼ同じ顔ぶれによるコンセールのCD(HMC-901135)だった。

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HMC-901135

第2楽章シシリエンヌ。これだ。わずか5分弱に、はかなさ、せつなさ、ぬくもりが綯交ぜになった時間が流れてゆくのがなんともいえない。もちろん、全曲を通しても大満足の内容だった。だれに教えてもらうわけでもなく、みずから探し当てたことのよろこびもあったのだろう。しばらくの間、このCDばかりを聴いていた気がする。

月日は流れて、卒業、就職、さらにいくつかの職場を経験もしたが、いま、あのときのCDを取り扱っている会社に身を置いている。

そして、この話にはまだ続きがある。数年前の「ラ・フォルジュルネ・オ・ジャポン」のCD即売&サイン会で、幸運なことにもピアニストのジャン=クロード・ペヌティエ氏と対面を果たすことができたのだ。そのときの好々爺とでもいう優しく人懐っこい笑顔が忘れられない。近年、ペヌティエは、絶品というべきフォーレのピアノ曲のアルバムを発表している。70歳を過ぎての変わらぬ活躍にとても嬉しくなった。

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MIR 072

KKC-5282(MIR-072)

MIR 100

MIR-072

縁とはほんとうにふしぎなものだ。いまは記憶に残る音楽との出会いをすこしでもお手伝いができればとおもう。

(text by S)