★カール・シューリヒト(1880-1967) とベルリン・フィル、64年のザルツブルク音楽祭ライヴ。当時ベルリン・フィルの首席指揮者であったカラヤンは、この公演の1カ月前にブルックナー7番をベルリン・フィルと演奏し、きたるシューリヒトとの演奏会のためにオーケストラを万全の状態に整えていました。クリーヴランドのセル同様、カラヤンも一流のゲストを招く前に、自身のオーケストラを最高の状態に保つことに余念がなかったのです。そうして迎えた本番では、特に弦楽パートにみられるレガートの見事さ、そして的確なテンポ、さらに壮麗な金管セクションと、何をとっても、ブルックナーがめざした演奏はこのような姿だったのではと思わせる完璧さです。『もし、永遠が口をきいたとしたら、このように聴こえるに違いない』ブルックナーのこの曲に関する熱烈な賛辞をこのように記したものがあるが、シューリヒトの演奏はまさにそれを具現化している。」(リチャード・オズボーン、ライナーノーツより)
★ブルックナーはシューリヒトの定番レパートリー。8,9番はウィーン・フィルとのEMI録音が有名ですが、7番はハーグ・フィルとの64年セッション録音(コンサートホール)しか有名なものがありませんでした。こうしたなか、アルトゥスが63年フランス国立とのライヴを、エピタグラフが61年スイス・ロマンド管とのライヴを発売、話題になったのは記憶に新しいところです。そして、このたび国内発売される64年ベルリン・フィルとのライヴ。まさに決定盤と称しても過言ではないでしょう。
★前半のプログラム「プラハ」もシューリヒトの十八番<おはこ>。前年のパリ・オペラ座管との録音(コンサートホール)が有名ですが、ここでも84歳とは思えない颯爽とした指揮に、晩年の特徴である透徹した抒情性・高貴な魂がみてとれ、感動を呼び起こしてくれます。