■ギタリストの死により空中分解したものの、今なお語り草になっている現代の実験ノイズロック・バンド=Womenの元ヴォーカルであるPatrick Flegelのソロプロジェクト、本作で5作目です。
■メロディだけを拾ってみれば素朴でシンプルな美を突いている本作。ソングライティングの時点でも極めて絶品ですが、それに対してこの酷く寂しげな音響世界を用意してくるその発想には驚くばかり。四方八方にノイズやら不協和音やらが聴こえるものの、それで埋め尽くされる訳ではなく、だからこそより寂莫をまとって聴こえるのでしょう…そう、哀愁ではなく寂莫に包まれた音楽であること、これは彼女の音楽を捉えるには非常に重要ではないでしょうか。
■そのシンセサイザーのうねりには昨今のニューエイジリヴァイヴァルの要素も感じますが、さらに広範で多様な要素を併せ持っています。NicoとFeistが作戦会議しながらDeerhunterみたいなバンドをやろうとしたら影響は窺えるけど全然違うサウンドになった…そんな感じでしょうか。それを最も象徴するような最終曲"Heavy Metal"はWomenが解散した理由である夭折したギタリストChristopher Reimerに捧げられたもの。こんなに雄弁にサウンドが語る音楽もなかなかないのでは…