本日11月9日はモラヴェツ(1930-2015)の90歳の誕生日です。「イヴァン・モラヴェツ/ポートレート」についてペライア、バルトシュなどがメッセージを寄せております。

20世紀を代表するチェコの偉大なピアニスト、イヴァン・モラヴェツ(1930-2015)。存命ならば2020年11月9日に90歳を迎えました。生誕90周年(没後5周年)を記念してチェコのSUPRAPHONレーベルから「イヴァン・モラヴェツ/ポートレート」をリリースしました。
この偉大なピアニストへの思いをチェコの5人のピアニスト、ヤン・バルトシュ、スラーヴカ・ピエホチォヴァー=ヴェルネロヴァー、イヴォ・カハーネク、ミロスラフ・セケラ、イトカ・チェホヴァー、そして生前モラヴェツと親交の深かったマレイ・ペライアがメッセージを寄せています。

マレイ・ペライア
チェコの偉大なピアニスト、イヴァン・モラヴェツとの個人的な付き合いは、何年も前にさかのぼります。1980年代、私は彼がリリースした録音を聴いていました。その後、私はオールドバラ音楽祭に彼をリサイタルに招待しました。こうして始まった友情は彼が亡くなるまで続きました。それはプラハに行くたびに彼に会うことはもちろんのこと、ベルリンやエルサレムなど、各都市でのツアーでもお互いに訪問しました。私は幸運なことに彼のリサイタルを何度も聴くことができ、また彼が行った魅力的なマスタークラスに参加することができました。直接会えない時に電話で長話したこともありました。私は、彼のピアニストとしての知識、芸術家としての姿勢に感嘆するばかりでなく、正直さと道徳的な誠実さに感銘を受けました。彼の演奏については、色彩感の豊かさ、フレージングの自然さに強く魅了されています。彼はこの世を去ってしまいましたが、彼が残してくれた素晴らしい録音を聴くことで、彼が唯一無二の存在であったことを思い出させます。

ヤン・バルトシュ
私がイヴァン・モラヴェツの生演奏に初めてふれたのは11歳の時でした。その夜、私はピアニストになろうと決心しました。モラヴェツの演奏は真摯かつ繊細にして毅然としていました。それはモラヴェツ自身の人柄もそうでした。SUPRAPHONレーベルからリリースされた「イヴァン・モラヴェツ/ポートレート」のボックス・セットは世界で最も偉大なピアニスト、モラヴェツの芸術性に触れることができます。

スラーヴカ・ピエホチォヴァー=ヴェルネロヴァー
毎日、ピアノの前に座ると、恩師イヴァン・モラヴェックが私のそばにいてくれるような気がします。それは師が私に与えてくれたピアノを現在も弾いて練習しているからです。弟子としてレッスンをしてくださった充実した9年間、そして音楽院で師事した10年間は私にとっての宝物です。その間、週に2回は師の声を聞いていたので、今でも彼の声が聞こえてくる時があります。「あなたが既に持っているものを演奏で表現しなさい!」「よい演奏は鍛錬した者のみに与えられます!」「運動を続けなさい!」などなど...。師を思い出すとき、彼が教師として私たち弟子のそれぞれの個性を尊重し、その誠実な人柄と同様に、純粋で正直な人間であったことです。彼は平凡さ、見せかけ、押し付けがましいことを嫌いました。今、私はその師の遺志を受け継ぎたいと思っております。

イヴォ・カハーネク
イヴァン・モラヴェツは、ルドルフ・フィルクシュニーと並んで、チェコの最も偉大なピアニストです。私は彼の弟子ではなく、彼と直接会ったこともごく僅かですが、完璧な音楽表現を追求する彼の姿勢に心を奪われてしまいました。細部にまで気を配り、丁寧に音楽と向き合うこのような謙虚な姿勢にはますます感銘を受けております。

ミロスラフ・セケラ
私は幸運にもイヴァン・モラヴェツのマスタークラスに参加する機会を何度か得ることができました。彼の楽曲に対する飽くなき研究と細部へのこだわり、そして努力は本当に驚かされました。私はそのマスタークラスを録音し何度も聴き返し、その演奏を比較しながら自分自身の演奏をさらに向上させるために役立てました。彼は完璧なパフォーマンスを求め続け、弟子たちにもその姿勢を求めました。彼のストイックなまでの飽くなき探求、そして類まれな才能により、彼はコンサート会場を聴衆で埋め尽くし聴き手に感動を与えました。

イトカ・チェホヴァー
ピアニスト、イヴァン・モラヴェツを思うと最初に思い浮かぶのは何でしょう?彼は偉大なピアニストであることは言うまでもありませんが、偉大な作曲家の作品を美しく演奏することに努力を惜しまなかったことを思い出します。作曲家の思いの核心に近づけるよう、その完璧なまでの演奏を実現するための絶え間ぬ努力の結果が反映されていました。彼が録音したモーツァルト、ベートーヴェン、ショパンに、私は子供の頃から感化されていました。音楽院で学んでいた私は、プラハで彼のコンサートを聴くことができ、その後、彼の弟子になることができたことは今も私の財産です。私は師のピアノへの向き合い方、作品に対する姿勢、そして解釈と、飽くなき探求に魅了されました。イヴァン・モラヴェツが亡くなってから5年が経ちました。しかし、師の演奏は今も私の中で生き続け、SUPRAPHONレーベルからリリースされた「イヴァン・モラヴェツ/ポートレート」を聴くことで、その魂をゆさぶる演奏がよみがえります。

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