アーティストインタビュー

canto cube《カントキューブ》アーティスト・インタビュー

日本オペラ界を担うテノール隠岐速人、バリトン高橋洋介、バス・バリトン後藤春馬、そして演奏活動の他、執筆・ラジオパーソナリティを務め活動の幅を広げるマルチ・ピアニスト長井進之介の4人によるオペラ・ユニットcanto cube《カントキューブ》。この度リリースされる彼らのデビュー・アルバム「LOVE」についてお話いただきました。



――――canto cube《カントキューブ》がどのようにして生まれたのか、教えてください。

あるコンサートをきっかけに、男声オペラ・ユニットをつくりたいと話しがありました。ピアノは長井と決まっていたので、バスの後藤がテノールの隠岐、バリトンの高橋に声をかけて結成しました。本当ならTTBBの4名のアンサンブルにするのが編曲などの事もあり良いのですが、合わせてみたらTBB+Pfでも面白いし、機動力抜群だったのでこのメンバーになりました。

ちなみに、canto cubeというグループ名は、「いつも劇場にいる人たち」ということでオペラ歌手、ピアニストの集まりなので付けられました。

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――――最初に4人で合わせた際にどのような印象を抱きましたか?(4人それぞれに聞く)

(隠岐)

歌は低音の響きが充実していて、ピアノは高音域の音の広がりが素晴らしいので大変歌いやすかったですね。

(高橋)

初めて集まった4人でしたが、それぞれに知っていた事もあり、昔からずっとやっていたかのような安心感、温かさを感じました。

それと同時に、私自身クラシック音楽以外の曲にこれまでほとんど触れてこなかったので、新しいジャンルの曲に触れる事ができ、新鮮さも感じています。

実際に歌えば、メンバー全員普段はソリストとして活動していることもあり、それぞれ個性が強い中、個性を消すのでは無く、生かしながらどのように融合していけるか難しさもありましたが、4人での作業はいつも楽しいものでした。

(後藤)

4人が奏でるエネルギーがひとつとなった時がありました。その瞬間極めて大きなパワーが生まれ、とても力強く、それでいて繊細で、私の心を揺さぶるものでした。歌っているのに、涙を堪えるのに必死でした。

(長井)

男声アンサンブルならではの力強さ、迫力に圧倒されたのはもちろんですが、3名の声の調和に感激しました。高橋さんの情熱的で力強く皆を引っ張ってくれる声、隠岐さんの抒情的で美しい声、そしてその重なりあう響きを後藤さんの安定感のある深い声が包む...最強のコラボレーションだと思います。私はこれまで女声や高い音の楽器とのアンサンブルが多かったこともあり、どちらかといえば繊細なものを得意としてきました。

彼らの厚みのある響きの中にこのようなピアノが重なることで、また新しい響きの力が生み出されているのではないかと思います。

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――――アルバム「LOVE」オペラのアリアや重唱からロックまで多彩なプログラムが組まれていますが、選曲どのようにされたのですか?

オペラとかクラシックと聞くと、敷居の高いものに感じてしまいがちですが、一般の方にどうやって「オペラ」や「声楽」、強いては「歌」の良さを感じていただくかを念頭においてプログラミングしました。

それには、オペラの入門としてアリアの名曲からポピュラーまで網羅することが必要だと思ったのです。

収録した後で気づいたのですが、恋人・友達・自然・家族への愛が歌われていたので、アルバムのタイトルを「LOVE」にしました。



――――重唱はオペラの魅力のひとつですが、その魅力は、音楽のどこに着目するとより楽しむことができるでしょうか?

オペラの中での重唱は、アリアをソロで歌う時と違って掛け合いがあったり、アンサンブルから生まれるハーモニーを感じたりすることができます。

オペラは、音楽や歌によってストーリーが展開していくので、重唱はとても重要な役割をもっています。ソロと違った音楽の大きな幅を楽しんでいただくのが良いと思います。



――――これから4人でどのような音楽にチャレンジしていきたいですか?

いつかオリジナル曲を歌ってみたいですね!

これからツアーも計画されていますし、さらにいうと次のCDも是非・・・お願い出来ればと思います!


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canto cube《カントキューブ》デビュー・アルバム「LOVE」

詳細はこちら→ https://www.kinginternational.co.jp/genre/kkc-083/

プロモーション動画はこちら→ https://youtu.be/QEMmwuLyx00


カントキューブ(canto cube)

Hayato-Oki

隠岐速人(テノール)

東京芸術大学音楽学部声楽科卒業。バリトンとして第13回国際マリオランツァコンクールファイナリスト(イセルーニャ/イタリア)、第48回日伊声楽コンコルソ入選(日本)。2013年から1年間のイタリア留学を機にテノールに転向。帰国後テノールとして『ラ・ボエーム』や『椿姫』等に出演。また、ベートーヴェン『第九』をはじめ、オラトリオなどのソリストとして出演している。2019年ニューヨークに留学し、その間IVAIに特待生として参加。第16回アルタムーラ/カルーソヴォイスコンペティションファイナリスト。2017年Théâtre Lyrichorégra 20主催国際ガラコンサート(モントリオール)に出演。国分寺音楽連盟会員。


Yosuke-Takahashi

高橋洋介(バリトン)

東京芸術大学卒業。同大学院修士課程修了。新国立劇場オペラ研修所修了後、文化庁海外派遣制度で渡英し、ロイヤルオペラハウス・ヤングアーティストプログラムにゲストとして参加し研修を積む。その後シュトゥットガルト音楽演劇大学コンタクトシュトゥディウムにて研修を積む。現在、東京音楽大学にて演奏研究員として勤務する他、気鋭の若手バリトン歌手としてオペラやコンサートなどに多数出演。東京音楽コンクール第2位及び聴衆賞。コンセール・マロニエ21第1位。ザンドナーイ国際コンクールファイナリスト。https://yosuke-takahashi-bariton.amebaownd.com/


Haruma-Goto

後藤春馬(バス・バリトン)

国立音楽大学卒業。新国立劇場オペラ研修所修了。文化庁新進芸術家海外研修制度研修員としてロンドンに渡り、英国ロイヤル・オペラ・ハウスのジェット・パーカー・ヤング・アーティスト・プログラムにゲスト歌手として参加し研修を積む。その後、アムステルダム音楽院のオランダ国立オペラ・アカデミーを修了。パシフィック・ミュージック・フェスティバルに合格し、ファビオ・ルイージ指揮のコンサートにソリストとして出演。また、オーケストラ・アンサンブル金沢定期公演にて『セヴィリアの理髪師』 バジリオ役にてマルク・ミンコフスキとの共演を果たす。オランダにて『ドン・ジョヴァンニ』レポレッロ役を歌い欧州デビューし、『ラ・ボエーム』 コッリーネ役、『仮面舞踏会』サムエル役など数々のオペラに出演。オランダ・コンセルトヘボウでのコンサート等にも出演。またベートーヴェン『第九』、ロッシーニ『小荘厳ミサ曲』等のソリストもつとめている。二期会会員。所属:株式会社二期会21。


Shinnosuke-Nagai

長井進之介(ピアニスト/音楽ライター)

国立音楽大学演奏学科鍵盤楽器専修(ピアノ)卒業、同大学大学院修士課程器楽専攻(伴奏)修了を経て、同大学院博士後期課程音楽学領域単位取得満期退学。在学中、カールスルーエ音楽大学に交換留学。DAAD(ドイツ学術交流会)「ISK」奨学生としてライプツィヒにも短期留学。アンサンブルを中心とした演奏活動と並行し、2007年度〈柴田南雄音楽評論賞〉奨励賞受賞(史上最年少)を機に音楽ライターとして活動を開始。『音楽の友』、『レコード芸術』、『ぶらあぼ』、『MOSTLY CLASSIC』などでレギュラー執筆を担当している他、クラシック専門インターネットラジオ番組「OTTAVA Fresca」(平日午前9:00~12:00)木・金曜日プレゼンターを担当。その他、ピティナ・ホームページや学研『おんがく通信』で連載をもち、レクチャーコンサートや司会、翻訳(英および独語)も行うなど、幅広く活動を展開している。著書に『OHHASHI いい音をいつまでも―幻の国産ピアノ"オオハシ"を求めて』(創英社/三省堂書店)、『マンガで教養 はじめてのクラシック』(朝日新聞出版社:共著)『ベートーヴェンとピアノ』(音楽之友社:編集協力)、『歌はいきなり上手くなります!小坂明子の美味しいヴォーカル・メソッド』(言視社: 構成)がある。日本音楽学会正会員、ピティナ研究会員。現在、ナレーションの研鑽も積んでおり、「テレビ朝日アスク」ナレーション養成プロ科を修了。

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