世界のレーベル博物館

2Lレーベル キングインターナショナルが取扱う世界のレーベルの魅力をご紹介する新連載。

2Lレーベル

2L

2001年にノルウェーのオスロで誕生した2Lレーベル。サラウンド・サウンドに徹底的にこだわる2Lレーベルは、世界で最初にブルーレイ・オーディオを製作、他社に先駆けてハイレゾ音源の提供をスタート、また、アメリカのグラミー賞に最優秀録音技術アルバム部門、最優秀サラウンド・サウンド・アルバム部門、最優秀プロデューサー部門で24回ノミネートされている世界を代表する高音質レーベルです。最近ではイマーシブオーディオ(Auro-3D,Dolby Atmosなどの立体音響)やMQA*を収録したアルバムを発売するなど、2Lが生みだす究極の高音質録音に世界から注目が集まっています。

*MQA(Master Quality Authenticated)は、ハイレゾ音源をCD並のファイルサイズにロスレス圧縮できる音楽フォーマット。

「So is my love(わたしの愛も)」の録音風景。 オスロにあるウラニエンボルグ教会で行われ、2Lの特徴である円形配置による録音。

また2Lレーベルが手がける音楽は、ノルウェーの作曲家や演奏家による音楽、北欧の雰囲気を反映させる世界各国の楽曲。Lindberg Lydのサラウンド・サウンド録音は人々のあらゆる聴取体験を一変させますが、それだけではありません。この革新的な録音は、音楽がいかに演奏されるか、いかに作曲されるかということに関する従来の既成観念を根底から覆すもの。したがって、高い音楽意識を持つエンジニアたちとの作業は、アーティストからの信頼も厚く、北欧を代表する弦楽オーケストラ、トロンハイム・ソロイスツや、名門ジャズ・レーベルにも録音のあるホフ・アンサンブルなど、2Lの録音芸術に魅せられてアルバムを制作するアーティストも大勢います。

「Quiet Winter Night(静かな冬の夜)」の録音風景。 オスロのソフィエンベルグ教会にて。

レーベル・オーナーであり、エンジニアである、モッテン・リンドベルグ氏は自身の録音についてこのように語っています。 「我々は大きなコンサート・ホール、教会、大聖堂といった、広々とした音響空間のある場所で録音します。そのような場所を使うことによって、私たちは初めて心に触れる音で録音することができます。大きな空間によって私たちが得ようとするのは、必ずしもリヴァーブの長さではありません。私たちが求めるのは、空間を遮断し音を反響させる壁がないことによる開放感です。広がりのある美しい録音は私たちの苦労を最大限に軽減させます。密着性と開放性が交わる微妙な接線を追求すること――それが私たちに課せられた挑戦なのです! 真に優れた録音はリスナーを肉体的に動かすことができるはずです。演奏する作品に相応しい録音場所を選ぶこと、そしてその場所でマイクロフォンと演奏者を、お互いの関連に気を配り、バランスを保ちながら配置することが、オーディオ的な意味で私たちの制作の核心をなしていると言えるでしょう。」

2L独自のマイクアレイ「2L-cube」。 全指向性マイクロフォン11 本を使用している。

単純で純正な信号経路は真のハイ・レゾリューション・デジタル・サウンドを得るために必須の手段であり、2Lレーベルは24ビット、352.8kHzで録音し、編集、ミックス、マスタリングから配信サービスまで、一貫してこのレゾリューションを保持しています。リンドベルグ氏はレーベルを立ち上げた当初を振りかえりこのように言います。 「当初はビット数が私たちの主要な関心事でした。しかし、現在はサンプル・レートのほうがより重要だと考えています。」 リンドベルグ氏は神経科学の分野における最近の研究を踏まえて、インパルス応答は意識下のレベルで私たちの根本的な聴覚とダイレクトにつながっており、私たちの感覚は、きわめて速く(マイクロ秒数で1桁台という速度で)反応するということが確認されていると言います。

「So is my love(わたしの愛も)」のマイク配置と楽器配置。 リンドベルグ氏自らそれぞれの楽曲に合わせた録音計画を立てたうえで設置。

録音後の作業において肝要なのは、録音によって保存したものを台無しにしないこと。そのため2Lではイコライジングやダイナミクス処理といった音質調整をほとんど施しません。編集によって最高レベルのエネルギーと細部を結びつけ、鮮やかな音楽パフォーマンスに仕上げることが可能になるため、重要な工程であることに変わりはありませんが、たとえば、デジタル・イコライザーを使う代わりに、しっかりした計画と全体的な視野を持って、録音に際するマイクロフォンの角度や位置を変えて調整すると言います。

Merging TechnologiesのHorusコンバーター。

モッテン・リンドベルグ

1970年生まれ。1992年に若干22才にして自らのプロダクション会社 Lindberg Lyd(Lyd=ノルウェー語でオーディオの意)を設立。EMI/Virgin、Naxos、Hyperion、Philipsをはじめとするレーベルのサウンド・エンジニア、プロデューサーとして活躍の後、2001年に自らのレコード・レーベル2Lを設立。

2Lを代表するアーティスト トロンハイム・ソロイスツ

© Jørn Adde

情熱。完璧。生々しい集中力。それらを基本精神として、室内オーケストラ、トロンハイム・ソロイスツは独自の音楽的地平を開拓しています。このオーケストラは、トロンハイム市の最高の音楽学徒に、合奏し、コンサート体験を得る機会を与えるため、1988年に創設。以来、トロンハイム・ソロイスツはノルウェーでもっとも優秀な合奏団のひとつとして認知され、そのきわめて開放的で明確なオーケストラ・サウンドにより、イギリスの音楽誌《クラシックFM》で"トロンハイム・サウンド" という称号を与えられるなど、国際的にも高い評価を得ています。チームワークと旺盛な音楽的探究心がオーケストラの核心をなしています。2002年から芸術監督を務めている、チェリストであり、教育者でもあるオイヴィン・ギムセの指導のもと、オーケストラに所属する演奏家たちは、技量を磨いて自信を深め、望むときに望むものを演奏し、果敢に音楽と向き合っています。

ホフ・アンサンブル

ホフ・アンサンブルのメンバーは、ECMレーベルへの録音で知られるトランペッターのマティアス・アイクMathias Eick (1979-)、1960年代の終わりからヤン・ガルバレク、ドン・チェリー、サム・リヴァーズ、カーリン・クルーグといった人たちと共演を重ねてきた「伝説的」ベーシストのアーリル・アンデシェン ( アリルド・アンデルセン)Arild Andersen (1945-)、パーカッションのルーネ・アルネセンRune Arnesen、ノルウェーのセッションギタリストのリーダー的存在のボルゲ・ペーテシェン=オーヴェルライルBørge Petersen-Øverleir (1967-)、ノルウェーの民俗楽器ハリングフェレ (ハルダンゲルフィドル) とスウェーデンのキー付フィドル、ニッケルハルパのあでやかな演奏で知られるアンビョルグ・リーエンAnnbjørg Lien (1971-)、そして、パット・メセニーやマイク・スターンとコラボレーションを行ってきたピアニストでアレンジャーのヤン・グンナル・ホフJan Gunnar Hoff (1958-)。ノルウェーを代表するジャズミュージシャンとセッションミュージシャンのグループです。

ウラニエンボルグ・ヴォーカル・アンサンブル

2002年1月に設立され、20 〜24人の歌手で形成されています。エリサベト・ホルテは設立当初よりこのアンサンブルの芸術監督および指揮者。何年にもわたり、彼らはさまざまな時代の宗教音楽や世俗音楽作品を多くのコンサートで演奏を行っています。2012年9月にレイキャヴィークで開催された北欧教会音楽シンポジウムで実演された彼らのノルウェー宗教音楽に対するレビューでは、「たった一つのコンサートで、これほどたくさんの感動を与えられる経験は稀である」と紹介されるほど、様式に対する多様性と、伝達する力こそが、彼らの演奏の特徴となっています。この合唱団は、ウラニエンボルグ教会と提携し、同教会は彼らのコンサート会場であり、彼らは定期的に朝の礼拝に参加し、八重唱曲やフル編成での歌唱にも参加しています。

オスロ弦楽四重奏団

© Bo Mathisen

オスロ弦楽四重奏団は今日もっとも多才な弦楽四重奏団の一つとして広く知られています。1991 年の設立以来、高度な芸術的水準と遊び心と誠実さとを持ち合わせたアンサンブルとして名声を獲得。ベートーヴェンの作品に熱心に取り組んでおり、2006 年には「ザ・ベートーヴェン・コード」と題した音楽祭を開催したほか、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲全曲演奏会を何度も敢行している。レパートリーは古典派の弦楽四重奏から現代作曲家の作品までと幅広いが、そこには四重奏以外のジャンルも含まれている。例えば「ペール・ギュント」や「トスカ」などの彼らのユニークな演奏は、弦楽四重奏の既成概念を破るものである。彼らは弦楽四重奏の本来の規模である小さな会場で演奏する活動を大切にしており、そうした「ハウス・コンサート」は、オスロ弦楽四重奏団にとってもっとも重要な舞台であり、そこで意欲的なプログラムを聴衆と共有しています。 オスロ弦楽四重奏団はデクストラ・ムジカに貸与された楽器を使用し、ノルウェー・アートカウンシルからの助成を得ています。現在のメンバーはゲイル・インゲ・ロツベルグ、リヴ・ヒルデ・クロック(ヴァイオリン)、アレ・サンドバッケン(ヴィオラ)、オイスタイン・ソンスタード(チェロ)。

おすすめディスクの紹介

シェル・トーレ・インネルヴィーク / ユートピア~クセナキス、フェルドマン打楽器作品

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ホフ・アンサンブル / 静かな冬の夜 (Quiet Winter Night)

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